就活弱者の手記 ~交通費が現金支給される合説について~

 年末年始、卒業まであと2カ月余りとなれば、さすがに無内定の4年生は焦る時期である。特に、卒業所要単位を取得できるかどうかも心許ない者にとっては、先行きが全く見えない進路未定の状態は苦しい。

 この時期は、そんな弱った学生たちを獲得しようと、いわゆるブラック企業が合同企業説明会などでも活発に採用活動を行っている。

 某月某日、私はある民間の人材情報会社(マ〇ナビとかリ〇ナビみたいな)が主催する合同企業説明会に足を運んだ。なんでも事前に予約して指定の時間(昼)までに会場で受け付けを済ませ、何社か以上訪問すると交通費として現金数千円を支給するというのである(特定できてしまうので詳述は避ける)。この時期は就活を継続している学生の数自体が少ないとはいえ、現金支給とは随分太っ腹な説明会だと思った私は意気揚々と会場入りしたのだが、実は交通費を貰うためには更なる条件があった。交通費支給の時間は受付の数時間後(日がどっぷり暮れる頃)で、その時間まで待たなければならない。説明会会場は入退場自由なのだが、その際には個人カードが回収され入退場した時刻が打刻されてしまうので、外で適当に暇をつぶして交通費が支給される時間に戻ってくるということはできない(主催者側が明言)。交通費を支給する時間がなぜ遅いのかという理由について主催者側は「準備に時間を要するため」と書いていたが、そんなものは前日にでもいくらでも用意できる。要するに学生を長時間会場内に留まらせ、多くの企業を訪問させるようにするための策なのである。

 実際、会場に来ていた学生たちは規定の数の会社を訪問し終ると、休憩スペースのようなところでスマホをいじったり飲み物を飲んだりして交通費支給の時間が来るまで暇をつぶしていた。だが、主催者側もそんな学生たちの思惑は想定済みで、この休憩スペースの隣にブースを設置し「弊社独自のスカウトサービスやエージェントサービスに登録しないか」などと、気を緩めた学生たちを休ませまいと追撃していた。

 交通費支給の時間が来ると受け渡し場所には学生の列ができていた。当然私も並んで交通費をゲット。受け取る際に、交通費の用のみに供する旨の誓約書を書かされた。封筒の中には現金数千円と一枚の紙が入っており「皆さんの負担を軽くするために交通費として支給しています。必ずIC乗車券にチャージしてください」と書いてあった。

 他にも、私はかなりたくさんの企業を回ったので粗品として「こすると消えるペン」をもらった。履歴書には使えないし字の色も肌色みたいな色だし要らねえよこんなの。あとカフェラテももらったが甘ったるい飲み物は好きじゃないので女友達(ここ重要)にあげた。この合説は何日間か開催されていて、明日も来るとクオカードだか図書カードだかがもらえるよという紙ももらったが、もとより一日だけの予定だったので捨てた。

 合説自体は交通費支給時間以降も続いていたのだが、学生たちはみんな交通費を貰ってさっさと退散していたので閑古鳥が鳴いていた。

 かなり説明を聞いたりパンフを貰ったりしてきたので、合説後に色々と調べたら実に酷い会社ばかりだったので愕然とした。まあ説明会の雰囲気自体少しおかしかったが…。詳しくは次回書く。

 

 交通費はIC乗車券にチャージしたかって? もちろん全部飲み代に使いましたよ。

 

 

次回予告 就活弱者の手記 ~合説の収穫と『若者応援企業』について~