退職面談をした後、露骨な仕打ちを受けている話

先週、直属の上司Aに退職する旨を告げた。

「理由は何か」と聞かれたので、

「半年間の間、残業も手当も無しに働いており、金銭的に辛いというのが最たる理由ですが、その他にも個人的な理由で、色々思うところがありますので」と私は答えた。

「誰もが通って来た道である」「仕事の喜びや楽しさを味わう段階まで来ていない」「ここで頑張ればどの会社でも通用する」「会社組織とはそのようなものである」「ここで辞めると逃げ癖が付く」といった、退職希望者を慰留する際の常套句が一通り続いた。

挙句の果てに「この件は会社の者には内密にして欲しい。相談するならご家族や友人にして欲しい」と言われた。

口止め、自分の部下から退職者を出すことによって査定に響くことを免れたい保身とも受け止め得る発言に私は、「誰々が辞めると言っているというような話が出ると職場の士気が下がるという懸念は理解できるが、同じ会社の人間だからこそわかることもあるだろうし、私が信頼できると思う人には相談する」と言った。

「駄目だ」とAは答えた。

 

会議室を長時間使用し、席に戻らない私とAを不審に思った上司Bが会議室に入ってきた。このBはAの上司で、取締役と営業部長を兼任しており、営業の現場と会社の経営のどちらにも携わっている。Bは巨漢で口が悪く、怒鳴ることもしばしばである。Bに逆らう者はほとんどいない。それは「Bの紹介で入社した」「熱い人だから」「言っていることは間違っていないし仕事もできるからあの立場にいる」ということらしいが私にはわからない。

Bが口を開いた。「お前ら何をしてるんだ?」

Aはいかにも極まりが悪そうな様子で、何も話そうとしなかった。私が答えた。

「単刀直入に申し上げて退職する旨を申し伝えました」

B「なぜだ?どういうことだ?場所を変えるぞ。居酒屋へ行く。お前も来い。Aは来るな。こいつと話す」

居酒屋に場所を移して私は話した。

「手取りが13万では生活ができません。それが一番の理由ですが、その他にも個人的に思うことがあります」

Bは激怒した。「何だと!13万だと!それは知らなかった。すまなかった。謝る。それは会社が悪い。今までの手当(固定残業代含む)は払う。それで許してくれ」

(未払いの手当約30万円はすぐに振り込まれた)

「金銭的な問題だけではないのです。他にも理由はあります」

「一週間待ってくれ。一週間後にまた話をしよう」

 

 

一週間が経った日、私はBに呼び出された。

「一週間が経ったが決意は変わらないのか」

「変わりません」

「ではいつ辞めるのか。今は繁忙期だし、会社も過渡期で大変な状況だ。お前はいつが妥当だと思うんだ」

「そういうことであれば12月末でしょうか」

「ではそれでいいな?」

「いえ、もっと早く退職します」

「お前は自分で12月末が妥当であると言っておきながら、それより早く辞めるというのはどういうことだ。それは人として、人間としておかしい。お前はおかしい。社会人として大人として、おかしい。そんなことは通用しない。それはわがままだ」

Bの顔面には血が上って真っ赤になり、鼻息も語気も荒くなっていった。

「今回の件は会社も確かに悪かったが、そんなに何か酷いことをお前に対してしたか?未払いの手当ても支払うように総務にもブチ切れたし、Aにもブチ切れてやった。給与に関しては元に戻してやったのに、これだけ慰留しているのに、それでも辞めるというのは不義理じゃないか。お前に義理は無いのか?」

「人は繋がりが重要だ。最近の若い奴は権利ばかり主張して、義務を果たさない。人との繋がりを疎かにする。お前は権利ばかり主張しているが、お前は何か義務を果たしたか?必ず自分に返ってくるぞ!」

 

この面談が終わった日から、Bは会社ですれ違っても私を無視する。

総務の人間も私を無視する。

私はこの2年半、自分なりにやってきたつもりだった。この仕打ちである。まったく大人げない。中学生かよ。

なぜこんなことを言われなければならないのか全く理解ができない。残業代を払わないのは違法であって、払われるべきであったものが払われたというだけの話であるのに、なぜBに対して義理があるのかさっぱりわからない。

私はきちんと会社と話し合って、この日からこの日に有給を使ってこの日に退職します、そうかじゃあ次の場でも頑張れよくらいの、円満な退職を望んでいた。

しかし、人間としておかしいなどと言われてしまっては、私もさすがに頭に来る。おかしいのはお前らだ。

退職する人間に対して優しくしろなどとは露とも思わない。だが、無視を決め込んだり睨みつけるのがお前らのいう社会人か?大人か?人との繋がりなのか?

本当にいい勉強をさせてもらった。こんな会社が、こんな人間たちが存在する。実体験できてよかった。