就職活動を総括する

大まかな流れ

2015卒として、3年生の12月1日の就活解禁日から活動を開始。ビッグサイトの大規模合同企業説明会やUターン希望者向け合同企業説明会に参加。学内企業説明会は参加せず(人気大企業は最初から除外)。

筆記試験対策、ES対策、履歴書対策、面接対策をする。といっても対策本を読んだり、内定者の活動記録を読むだけで、添削など第三者を介した対策はせず。

年明けて2月頃からESを提出し始める。会社訪問にも行く。3月に初の一次面接(金融)、落ちる。

4月、4年生の春学期が始まる。単位数が逼迫しており、授業に出ず就活に集中すると単位を取れず留年してしまうし、授業に出て単位を取ることに専念すると就活ができないというジレンマに陥る。しかし、できる範囲で両方やっていくことを決意。

4月末、Uターン企業(金融)の一次銓衡としてGD。(このUターン企業は選考自体よりも、授業がある中で、朝早く起きて飛行機に乗ってまた夜帰って来るという日帰り移動をするのが大変だった。Uターンと言っても地元ではなかったため、もちろん事前に入念に地図や交通機関を確認してはいたものの、土地勘がないのでやはり不安で緊張した。)進行役やタイムキーパーは他の人が手を挙げる。内定者の活動記録をもとに事前の対策を立てていたため無難にこなす。通過。

5月初旬、前述のUターン企業の二次銓衡として一次個人面接。これも内定者の活動記録を基に予想される質問に対する答えを用意。もちろん定番の質問に対する答えも。ただし丸暗記ではなく、要領を掴むだけにしておいた。通過。

5月上旬、前述のUターン企業の二次(最終)個人面接。質問に対してひとつだけ誤った回答をしてしまったらしいことはわかったが、全体の感触としては悪くなく、正直決まったと思った。面接の後は軽く観光をして、お土産を買ったりして余裕をかます。本当に内内定だと思っていた。しかし一週間後にお祈りメールが届き、精神的にかなり動揺する。しかも3度の飛行機移動で要した交通費は10万円以上で、それが全て無駄になったことに落ち込む。高い勉強料だと言えばそれまでだが。

6月、なぜ落ちたのだという怒りや失望、精神的ダメージを残しつつ、大学の試験対策に集中し始める。

7月、試験期間。夏採用にかける。

8月初旬、試験終了後、まだまだ学内では企業説明会が開催されている。夏季休業中もそれらに参加。

8月上旬~下旬、盆休みを除き鉄鋼メーカーなども受ける。ESと書類は通過も一次面接ですべて落される。

9月、秋学期が始まる。この頃から学内企業説明会が開催されなくなり焦り始める。しかし、他大と合同の説明会が開催されていることを知り安堵、参加する。

10月、秋採用企業を受ける。書類は通過するも面接で落とされる。30分の予定が15分で帰されることも。

11月、他大との合同説明会も全く開催されなくなり、焦燥はピークに達する。

12月、大学の試験対策。この時期でもやっている民間人材サイトの豪雪に参加。来ている企業の酷さに驚愕する。このことは前にブログに書いた。25日のクリスマスの日に新卒ハロワに登録する。ハロワ職員とのカウンセリングを行う。独立行政法人、社団法人などの求人の探し方や紹介を受け、応募するが書類で落とされる(職員の話では院卒などの高学歴のひとが受けるらしく難易度は高いとのこと)。

1月、ハロワ主催の豪雪に参加し始める。またキャリセンに足を運び求人票を片っ端から調べ始める。いくつか応募も落ちる。

2月、ハロワ主催の豪雪参加。応募した企業の一次面接通過。成績発表により卒業が確定。

3月、前述の企業の二次(最終)面接通過。内定。

 

応募した企業は25~30、面接までいった企業は7,8くらいだと思う。少なすぎだろと言われても仕方がない。いかんせん、単位を取りまくらないといけなかったので仕方ない。

それに実際に応募した企業がこれだけということであって、豪雪で見たり聞いたり、求人票を見て調べたりした会社は100を超えている。片っ端から応募すればもっと早い時期に内定を得ていたのかもしれないが、それもどうかと思う。ある程度自分が興味を持って納得しないと。

島沢優子『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実』について

 2014年12月5日に発売された『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実』という本を読んだ。著者は筑波大の体育科出身で在学中はバスケの選手をし、卒業後は日刊スポーツの記者となり、現在はフリーライターの島沢優子という人物である。

 桜宮高校の暴力事件に関するノンフィクション、ルポタージュは今のところこの一冊しか出ていないようであるので、事件を知るための貴重な資料である。

 本書は全体を通して鉤括弧を用い会話文を挿入する小説のような形式で事件を追う流れとなっており、読者の感情に訴える構成となっているので、書かれていることが「事実」なのか著者の「意見」なのかを注意しながら読む必要がある。しかし、少年が追い詰められていく過程や自殺後の遺族の労苦は本当に心が痛む。大切なご子息を亡くされた遺族の方の心痛は察するに余りある。

 著者は「顧問ひとりに責任を押しつけスケープゴートにして終わるのでは、何の解決にもならない」として様々な観点から教育現場における体罰の解決法を検討しているが、私はすべて顧問が悪いに決まっていると思う。バスケ部顧問の暴力体育教師、小村基(こむら はじめ)が少年の顔を腫れあがるまで殴るなどの暴行を加えていたせいで少年は自殺したのである。この顧問は事件から2か月後に紙粘土でバスケ選手を模った像を持って遺族の元に現れ、「これを仏壇に供えて欲しい」と言ったそうである。

 外部の監察チームが、少年が自殺した外的要因を4つ挙げている。1:顧問の理不尽な論理、2:顧問の性急な体罰、3:短期間に心理的に揺さぶられたこと、4:ハードな部活生活である。大体どれも顧問が原因である。

 ところで本書ではこの後、文教大学教育学部特別支援教育専修教授で小児心理医でもあるという成田奈緒子という学者の見解が紹介される。睡眠不足だとセロトニンが分泌されず悪い方向へ行く、そういう生活をさせていることに顧問は気づかなくてはいけなかった、と言う。それはそうだが顧問は極悪人なのであり、気づく気づかないという問題ではない。そして最も引っ掛かったのが「中・高生は、親に言えない悩みを仲間とわかち合いながら成長していくのが、思春期のあるべき姿」という指摘である。確かに少年が所属していた男子バスケ部員らは少年の葬式で笑う、遺族への情報提供を断る、SNSを止めず写真を共有する、一周忌にも来ないという屑揃いであって、少年が良き仲間に恵まれなかったというのは本当だろう。しかし、「中・高生は、親に言えない悩みを仲間とわかち合いながら成長していくのが、思春期のあるべき姿」というのはどういうことか。成田奈緒子とかいう学者は、思春期に対して何か幻想を抱いているのではないか。確かに、親に言えない悩みを仲間とわかち合いながら成長していく中・高生はいるだろうし、そもそも仲間などいないまま過ごす中・高生もいるだろう。それは事実としてあるだろう。しかし、それが「思春期のあるべき姿」かどうかというのを、決めることはできないだろう。仲間がいない奴はだめなのか。こういう決めつけは危険ではないか。

就活弱者の手記 ~合説の収穫と『若者応援企業』について~

 前回の記事で書いた合説に参加した後、説明を聞きパンフを貰った企業を会社四季報や転職会議、Vorkers等で調べてみることにした。その結果は全く醜悪であった。例えば、ある建設会社(彼らはそう言っていた)の説明では、「私たちは〇〇ヒルズや〇〇ビルの建設に携わりました。この仕事の醍醐味はなんといっても自分の子どもに『あの建物はお父さんが作ったんだぞ』と自慢できるところです。仕事の成果が残り続けて人々に使ってもらえるのはこの上無い喜びで……」などと言っていたので、素晴らしいなあと思ったりもした。しかしこの会社の従業員は確かに正社員なのだが、実際には様々な工事現場に派遣されて作業に従事する。この会社の実質は労働者派遣会社であった。しかも選考方法が人事や他の応募者の前で自己PRを行い、それだけで内定を出すという。さもありなん。

 ある保険代理店は、保険代理店といえば聞こえはいいが、実際の業務内容はコールセンターに配属され一日中ひたすら個人宅に電話をかけて生命保険や損害保険販売のアポを取るというものだった。高齢者を中心に電話をかけるらしいのだが、一体どこからデータを持ってきているのか? ガチャ切りや電話口で罵倒されたりするようだが、当たり前である。どこで調べたのか、いきなり電話をかけてきて保険に入りませんかなどと言われたら誰だって頭に来る。高齢者をターゲットにしているのは売りつけやすいからだろう。このテレマーケティング(というらしい)の保険代理店は2社くらい来ていた。一つはネットで調べればすぐに出てくるくらい有名なブラック企業で、離職率はとても高い。福利を充実させ正社員の比率を増やして従業員の流失に歯止めをかけたいそうだ。もう一つはベンチャー企業らしいがここの人事がやたら馴れ馴れしく、「どうせやりたいことなんかないっしょ?」「最近は草食系男子が多くて、気付いたら女子ばかり採用してる」などと言っていた。リクナビでこの会社の採用ページを見ると、先輩社員の声が掲載されているのだが、皆カルトに洗脳されたみたいな表情と目つきで戦慄した。

 

 さて、今日の題名にもある『若者応援企業』についてである。この説明会に来ていた企業が「厚生労働省から『若者応援企業』に認定された」ということをやたらアピールしてきた。採用案内のパンフレットにもそのことが書いてあったので一体何だと思って調べた。

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厚生労働省 「若者応援企業」宣言事業 

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jakunen/wakamono/wakamonoouen.html

次の[1]から[7]の基準(宣言基準)をすべて満たす中小・中堅企業であれば、「若者応援企業」を宣言することができます。

[1] 学卒求人など、若者対象のいわゆる「正社員求人」をハローワークに提出すること
[2] 「若者応援企業宣言」の事業目的に賛同していること
[3] 以下の就職関連情報を開示していること
・社内教育、キャリアアップ制度等
・過去3年度分の新卒者の採用実績及び定着状況
・過去3年度分の新卒者以外の正規雇用労働者(35歳未満)の採用実績と定着状況
・前年度の有給休暇および育児休業の実績
・前年度の所定外労働時間(月平均)の実績 等
[4] 労働関係法令違反を行っていないこと
[5] 事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと
[6] 新規学卒者の採用内定取消を行っていないこと
[7] 都道府県労働局・ハローワークで扱っている助成金の不支給措置を受けていないこと

「若者応援企業」を宣言するためには、ハローワークに若者(35歳未満)のための求人の提出に加え、宣言書の提出が必要となります。

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どうやらこの事業行政行為厚生労働省が各企業を個別に審査して認可を与えるという性質の物ではなく、要件を満たしてハロワに求人と宣誓書を出しさえすれば『若者応援企業』であることを宣言してもよい、という物のようだ。

 ちなみ前述の企業の採用案内には大きく「若者応援企業認定」の文字と「認められました。」という文言が記されているが、これは企業が勝手に宣言しているだけのことであって、厚生省から直々に認められたわけではない。本当に要件を満たしているかどうかは誰にもわからないのである。宣誓書を出しているとはいえ、そんなものは形式に過ぎず、形骸化するに決まっている。宣誓といってもいくらでも嘘はつけるのであるし、嘘をつくのがブラック企業である。それにたとえ偽りではなかったとしても、例えば、[5] 事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと、などというのは、労働者を肉体的精神的に酷使するとか、そうでなくても働きにくい職場であれば、勝手に自主退職していくのだろうから簡単にクリアできてしまうのである。

 そもそも、『若者応援企業』であることをアピールしなければ人が来ない所など、まともではない蓋然性が高いのではないか。と思っていたらこんな記事を見つけた。

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産経ニュース:「若者応援企業」を提訴 実は「ブラック」? 元社員、過重労働で心の病 2014.8.7

http://www.sankei.com/affairs/news/140807/afr1408070029-n1.html

 >労働時間は最長で月270時間に及び、研修とされた入社前約1カ月の労働も賃金は支払われなかった

厚労省の担当者は「登録企業に法令違反があれば、登録の保留や取り消しを検討する」としている。

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「登録の保留や取り消しを検討する」って検討するだけかよ。

 もちろん『若者応援企業』のなかには優良な企業もあるのだろう。しかし、求職者は慎重になるべきである。前述の説明会に来ていた企業は『若者応援企業』を宣言しているが、平均年齢は20代、平均勤続年数は約4年、採用からの一年以内に3割越えが離職している。まあ、公表しているだけましなのか。

就活弱者の手記 ~交通費が現金支給される合説について~

 年末年始、卒業まであと2カ月余りとなれば、さすがに無内定の4年生は焦る時期である。特に、卒業所要単位を取得できるかどうかも心許ない者にとっては、先行きが全く見えない進路未定の状態は苦しい。

 この時期は、そんな弱った学生たちを獲得しようと、いわゆるブラック企業が合同企業説明会などでも活発に採用活動を行っている。

 某月某日、私はある民間の人材情報会社(マ〇ナビとかリ〇ナビみたいな)が主催する合同企業説明会に足を運んだ。なんでも事前に予約して指定の時間(昼)までに会場で受け付けを済ませ、何社か以上訪問すると交通費として現金数千円を支給するというのである(特定できてしまうので詳述は避ける)。この時期は就活を継続している学生の数自体が少ないとはいえ、現金支給とは随分太っ腹な説明会だと思った私は意気揚々と会場入りしたのだが、実は交通費を貰うためには更なる条件があった。交通費支給の時間は受付の数時間後(日がどっぷり暮れる頃)で、その時間まで待たなければならない。説明会会場は入退場自由なのだが、その際には個人カードが回収され入退場した時刻が打刻されてしまうので、外で適当に暇をつぶして交通費が支給される時間に戻ってくるということはできない(主催者側が明言)。交通費を支給する時間がなぜ遅いのかという理由について主催者側は「準備に時間を要するため」と書いていたが、そんなものは前日にでもいくらでも用意できる。要するに学生を長時間会場内に留まらせ、多くの企業を訪問させるようにするための策なのである。

 実際、会場に来ていた学生たちは規定の数の会社を訪問し終ると、休憩スペースのようなところでスマホをいじったり飲み物を飲んだりして交通費支給の時間が来るまで暇をつぶしていた。だが、主催者側もそんな学生たちの思惑は想定済みで、この休憩スペースの隣にブースを設置し「弊社独自のスカウトサービスやエージェントサービスに登録しないか」などと、気を緩めた学生たちを休ませまいと追撃していた。

 交通費支給の時間が来ると受け渡し場所には学生の列ができていた。当然私も並んで交通費をゲット。受け取る際に、交通費の用のみに供する旨の誓約書を書かされた。封筒の中には現金数千円と一枚の紙が入っており「皆さんの負担を軽くするために交通費として支給しています。必ずIC乗車券にチャージしてください」と書いてあった。

 他にも、私はかなりたくさんの企業を回ったので粗品として「こすると消えるペン」をもらった。履歴書には使えないし字の色も肌色みたいな色だし要らねえよこんなの。あとカフェラテももらったが甘ったるい飲み物は好きじゃないので女友達(ここ重要)にあげた。この合説は何日間か開催されていて、明日も来るとクオカードだか図書カードだかがもらえるよという紙ももらったが、もとより一日だけの予定だったので捨てた。

 合説自体は交通費支給時間以降も続いていたのだが、学生たちはみんな交通費を貰ってさっさと退散していたので閑古鳥が鳴いていた。

 かなり説明を聞いたりパンフを貰ったりしてきたので、合説後に色々と調べたら実に酷い会社ばかりだったので愕然とした。まあ説明会の雰囲気自体少しおかしかったが…。詳しくは次回書く。

 

 交通費はIC乗車券にチャージしたかって? もちろん全部飲み代に使いましたよ。

 

 

次回予告 就活弱者の手記 ~合説の収穫と『若者応援企業』について~

東浩紀×市川真人トークショー 2014年9月29日(月) 於早稲田大学大隈記念講堂

記憶を頼りに思い出せるだけを書く。間違ってるかもしれないし前後の文脈が抜け落ちてるので注意。順もバラバラ。

  

東「題名に『硬直化するフクシマ』とあるが福島の話はしないので、それを聞きに来た人、社会運動系?の人には申し訳ない」

「社会運動系の人はひじょうに狭い範囲の話をしないと納得しない。質疑応答でもかなり糾弾的である」

「最近興味あることといえば、在特会とか?(笑)」

在特会の人たちがぼくに対して怒るのはわかる。カウンターの人たちからも怒られるっていうのは、単に縄張りに入ってこられたからだと思う。俺たちは今までここで頑張ってきた、お前は入ってくんなよみたいな。文芸誌とかでもそんなのばっかり。東がこの雑誌に書くなら俺は書かないとか」

 

市川「今日のテーマは作家としての東浩紀なので。まずはソルジェニーツィン試論について」

東「法政大学で講義していた柄谷行人の授業に潜っていた。授業が終わった後に、「俺はどうしていいかわからない」と相談したら「学食でも行くか」と誘われて学食に行った。しかし阪神タイガース?の話をするばかりで、ちょっと悔しかったし、こんなんじゃだめだ、何か持っていかないとと思ってソルジェニーツィン詩論を書いた。毎週木曜に授業があったが翌週は休みだった。原稿用紙を買ってきて手書きで2週間で書いた。40枚くらい」

市川「それ以前は何か書いてなかったの?」

東「全然何も。興味もなかった」

市川「習作みたいなものも?」

東「ノートに少し書いてたけど読むに堪えないもの。公表すべきでない。もう逸失してしまったけど。ノートに書いた方がサルベージはしやすい。昔(文豪みたいな何とかとかいうソフト)をWindows98でも使えますみたいなソフトを買ったがパッケージすら開封せずに今まで来た」

市川「東浩紀の小説について」

東「ぼくは文学からはもう随分離れてる。純文学という物にも興味が持てない。文学自体が力を失ってる。ゲンロンカフェのイベントで小説家を呼んでも全然人が来ない。奥泉光呼んでも十数人しか来ない。小説が新聞とかで過大評価されている。そして小説読みっていうのは金を持ってない。2000円払ってまで聞く期待をかけてないのかも。いつ結婚するのかなんて話を聞いてもしょうがない。金曜日にいとうせいこうが来るけど、いとうせいこうなんてかなり知名度高いけどほとんど人は来ないと思う。ゲンロンカフェを経営していると色々わかる」

市川「十数人の来場者で利益は出る?」

東「出ない。30人くらいじゃないと」

 

東「自分の小説について話すのは恥ずかしいからあまりやりたくない。完全な趣味としてやってる。なぜ小説を書くのかとか聞かれても困る。岩釣りが趣味の人になぜ岩場で魚を釣るのかと聞くようなもの」

市川「クリュセの魚はとてもよかった」

東「僕が小説でやっているのは、いわゆるセカイ系への返答」「小説を書くのは、特に時間の経過を書くのは苦手。伊坂幸太郎を読んでるとそこがとても自然でめちゃくちゃうまい」

市川「あずまんの小説は東浩紀がよく出てる。急に俯瞰的になったり、すごく集中?したり」

東「クォンタム・ファミリーズなんかも編集者の矢野さん?との関係があったから出せた、編集者が異動したら終わり」

 

早稲田文学の話で盛り上がってたがよくわからなかった

東「俺を早稲田文学から追い出して、あの人に巻頭に書いてもらえばいい。ぜひ大作を書いてもらいたい」

「自分が編集委員になったことで戦争になったりして迷惑をかけたくない、それなら最初から降りる」

「脅しだとか、権力を使って潰しに来たとか言われるのが嫌」

「あんたらは外部だと思って安心してツイッターなんかで絡んできているのかもしれないけど、いつ内部になるかわからないんだ!と言いたかったんだよ」

「いるんだよなー、東が書いてるなら俺は書かないって抗議してくる人が。雑誌の名前は出せないけど、宇野常寛からは実際に抗議が(編集側に?編集を通じて?)来た」

佐々木中なんかも絶対そういうことやりそうだと思う。あいつはそういう人間だと思う(笑)。これは僕が勝手に思ってるだけだからOK(笑)。そういう人間だって断定してるわけじゃない。僕の名前をはっきり出さないけど書いてる。僕のことをめちゃくちゃ批判して馬鹿にしている。東浩紀なら馬鹿にしてもいいという共通認識を持った人たち。東浩紀の弱いつながり読んでみたけどなかなかいいじゃん?みたいなことが言えればいいんだけど、そういうこと言えない人間だと思う」

市川「この前佐々木中と話をした。東浩紀は一度も佐々木中のことを悪く書いてないって」

東「そう、そもそも全然接点がないし佐々木中について何か書いたこともなかったと思う」

市川「そしたら、でも僕はゲンロンに呼ばれないので……って(笑)」

東「呼ばれたいと思ってんの(笑)。全然、呼ぶし、向こうから来てもらっても構わない。ゲンロンには僕のことを批判してる人も結構呼んでる」

 

東「僕は広く読まれたいとか、メディアによる情報伝達とか一切興味ない。顔が見える相手に向かってやりたいことをやりたい。本も1万部くらい売れて、生活できていければそれでいい。啓蒙とか、馬鹿にわかりやすく伝えるなんて努力は放棄」

市川「じゃあ弱いつながりはどうなの?」

東「弱いつながりは実はかなり高度な本で、そういう仕掛けを施してある。簡単に読めるのは錯覚。弱いつながりは柄谷行人が最近よく世界共和国とか言っていることへのすごく遠まわしなアンサー。世界共和国が成立するためには二つの条件がある。各国が?共和制であることと相互に訪問すること。彼は前者を重要視してる。彼はヘーゲリアンだから民主主義を重視してそういうことを言っているが、現実的でない。筋がよくない。お互いの交流を深める訪問権の方が重要。僕はネット思考なんで。カントの永遠平和にために的にはそう。ただ、あんなもん(「弱いつながり」)で世の中は変わらない。今は嫌韓本・嫌中本とかしか売れない。あんなのが30万?何十万?部も売れる国。絶望しかない。浅田彰に言わせれば土人の国。まだないけど、そのうちネトウヨ大学ができる。田母神さんを教授にしたりして人気が出る。背に腹はかえられないってことでいろんな大学がやり出す。早稲田みたいな伝統ある大学でもあり得る」

市川「今は教授個人の良識でもってる部分があるかもしれない」

東「この国では百田尚樹でも日本を代表する作家で、知識人ということになる。あの人相当なこと言ってるけど、作家でNHKの経営委員ということで知識人扱い。櫻井よし子も知識人」

市川「村上春樹もいるじゃない? 日本を代表する作家」

東「そう、村上春樹百田尚樹も日本を代表する作家ということになる」

 

東「僕は民主党寄りだったんだけど、安倍政権になっちゃったし波が去ってしまった。いつになるかわからないけどまた波が来るまで、もう来ないかもしれないけど、待つしかない」

「コミュニティがないとだめ。コミュニティは大事。浅田彰京都造形芸術大学の教授に落ち着いてしまってる?し、柄谷行人もNAMを解散してしまっている。組織でも言説でも持続が大事。いつ何が起きるかわからない。コミュニティがなかったから震災でも柄谷行人は個人でデモの先頭として?参加することしかできなかった。大きな流れを作れなかった。柄谷行人は絶対にNAMを続けているべきだった。知名度もあったし、人望もあったから可能だったはず」

「大塚や宮台なんかはメディア評論家だから、波?流れ?の中で活動?する。でもアラブの春とかオキュパイとかのあとに何か残ったかといわれれば何も残ってない」

浅田彰が死ねって命令したからって死ぬ奴はいない。でも普段からそういうコミュニティを作っておかないと、波が来て去って、社会に何か大きな変動が起きたとき困る」

「波が来てる時には何もしなくてもボランティアや人が集まってくる。波が引いたとたんに人は離れていく。その時どう凌ぐかという運動論が無い。ゲンロンでも今残ってる人は波が来る前の人たち」

「ゲンロンに國分功一郎呼んだ時も思ったけど、社会運動系のファンがつくと気の毒。言いたいことを、特定のことを言えなくなる。糾弾されるし」

市川「弱いつながり、とか文学とか哲学では世界なんて変えられないって言ったけど、それは言葉なわけじゃない? そしてそれにはいろんな歴史とか背景があって。例えば釣りで世界を変えようなんて言った場合にそっちの方が無理だと思うんだけど」

東「それはわかんないよ。釣りにも歴史があって、釣り評論家がいて釣りの専門雑誌があって、釣竿なんかもカーボンファイバーとか使って凄い進化しててさ、すげえ軽いみたいな。そんでポイントに投げるのなんかもすごいピンポイントに投げれるようになってるのかもしれない。軍事技術に転用できたりするんじゃない」